SSブログ

読書の日々 (保木邦仁/渡辺明『ボナンザVS勝負脳 』) [読書]

 三連休最後の日は体育の日だった。季節柄、運動会やスポーツ大会などが日本各地で行われていたようだが、この日、都内某所では人間とコンピュータの雌雄を決する戦いが行われていた…。
 ターミネーターやマトリックスのようなSFの前フリのように思えるかもしれないが、何のことはない、清水市代女流王将とコンピュータ将棋プログラム・あから2010の特別対局が行われていたのである。いち観戦者の立場として、対局を迎える前にコンピュータ・人間の力量を調べておけばより楽しめるだろうと俺は考え、ネットの情報で調べると、2007年に渡辺竜王に敗退したコンピュータ将棋はわずか3年で、
•ハードウエア部
-東京大学クラスターマシン:
 -Intel Xeon 2.80GHz, 4 cores 109台
 -Intel Xeon 2.40GHz, 4 cores 60台
             合計 169台 676 cores
-バックアップマシン:4プログラムそれぞれについて1台ずつ
 -CPU: Xeon W3680 3.33GHz 6cores
 -Memory: 24GB (DDR3 UMB ECC 4GBx6)
•ソフトウエア部
-構成:国内トップ4プログラムによる多数決合議法(4つのプレイヤープログラムに局面を渡し、指し手を受け取り、もっとも多い手を指し手として返す)
 -合議マネージャ: 開発:電気通信大学伊藤研究室&保木邦仁
 -プレイヤー1:「激指」開発:激指開発チーム(鶴岡慶雅、横山大作)
 -プレイヤー2:「GPS将棋」開発:チームGPS(田中哲朗、金子知適ほか)
 -プレイヤー3:「Bonanza」開発:保木邦仁
 -プレイヤー4:「YSS」開発:山下宏

(引用元:http://www.ipsj.or.jp/50anv/shogi/press2.html

と、装いも中身も大変貌を遂げていた。最先端のハードウェアによるハイパフォーマンスクラスターの上に思考ルーチンの異なる4種類の将棋プログラムを載せ、渡した局面に対する指し手の演算結果を多数決で決めるとのこと。要はソフトも機械本体も大幅パワーアップしていた。対する清水女流王将は女流棋士では第一人者だが、ネットでは女流棋士のレベルはトッププロでも奨励会初段ぐらいと言う人もいた。俺のようなヘボの500倍くらいは強いのだろうが、少々荷が重いというのが実際のところらしい。プロレスに無理矢理例えれば、往時の全日本プロレス四天王と変則タッグマッチをするようなものだろうか。無論、ネットの前評判ではコンピュータ勝利との意見が多かった。
 で、結果だが以下のブログの棋譜の通り、あから2010の完勝であった。
http://himeyuriniaiwokomete.blog.so-net.ne.jp/2010-10-12
素人が見てもわかるが、清水女流王将はあから2010の歩を一枚も取っていない、つまり全然攻め込めなかったようである。これは米長会長が言っていたように、序盤~中盤に長考で持ち時間を使い切った清水女流王将の戦術ミスだろう。一応IT業界をかじった人間としては、コンピュータ将棋の進化というか機械やるじゃんかという素直な感想と、人間の女性代表が負けて残念、次こそは雪辱をしてほしいという複雑な気持ちを抱いてしまった。
 3年前の対局では、渡辺竜王はボナンザの弱点・長所を綿密な調査で見抜き、見事勝利を勝ち取った。コンピュータの計算よりも棋士の勝負勘が優ったわけだが、今回の対局では4つの個性を持ち、最速の読みをもつ日本最強の将棋コンピュータに分があったようである。本書の94pの保木氏の言葉を引用したい。
保木 公式な場で初めて1回勝つのはいつかということなら、数年以内に起きるかもしれないと思います。まあ、起きたとしてもそれは偶然のようなものです。

謙遜されてはいるが、宣言通りの結果で保木氏を初めとした開発陣は鼻が高いことだろう。ソフト開発者の端くれとしてはお見事の一言しかない。今後、誰があから2010の対戦相手になるのかはわからないが、熱戦を期待したいと思う。


ボナンザVS勝負脳―最強将棋ソフトは人間を超えるか (角川oneテーマ21)

ボナンザVS勝負脳―最強将棋ソフトは人間を超えるか (角川oneテーマ21)

  • 作者: 保木 邦仁
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2007/08
  • メディア: 新書



nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。