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読書の日々 (渡辺靖 『アメリカン・デモクラシーの逆説』) [読書]

 アメリカン・デモクラシーといえば、正義・自由・平等・多文化・個人主義を実現する政治体制とか社会なんてことを頭に思い浮かべる。で、本書はその「逆説」とタイトルで謳っているだけあって、見た目の素晴らしさとは裏腹に厄介な問題や矛盾を抱えていたり、逆に「反米」という主義主張も当事者に都合よく使われている現実もあるという話。
 本書が指摘するように、現代のアメリカ社会はかなり箍が外れた状態である。例えば1980年代以降には結婚前に財産の割り振りや互いの義務、責任の所在を明確にする婚前契約書の作成が増加しているという。またロサンゼルスの郊外には、超富裕層のために防犯性を向上させた、ゲーテッド・コミュニティと呼ばれる警備員・フェンス付きの屋敷町があると言う。周囲を拒絶する「壁」はさながら中世の要塞のようであり、デモクラシーが進歩した筈のアメリカ社会で一種の退行的な現象が起きているというのは皮肉でしかない。
 2010年に刊行されているだけあって、ここ2~3年のオバマ政権の、アメリカの理想と伝統への回帰という指摘は、確かにリンカーン大統領の言葉とかアイテムとかを使ったりしてることを思い出したりして個人的に興味深かった。また、新書のため、情報量の少なさや論拠が弱いといころがあると思う。同じような問題を扱っている、ちょっと昔の本では、ジョック・ヤングの『排除型社会』を読むといいかもしれない。

アメリカン・デモクラシーの逆説 (岩波新書)

アメリカン・デモクラシーの逆説 (岩波新書)

  • 作者: 渡辺 靖
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2010/10/21
  • メディア: 新書



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