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読書の日々(『手塚治虫「戦争漫画」傑作選』) [読書]

 漫画の神様、手塚治虫が発表した読み切り短編の中から、「戦争」をテーマとした作品を集めたアンソロジー。作品の殆どは1970年代ということもあって、時代の空気みたいなものを感じさせる暗く重苦しい内容である。
 中でも印象的なのが巻頭の『紙の砦』で、手塚自身を思わせる学生の軍需工場に動員されてから終戦までを描いた作品である。戦火が激しさを増す有る日、工場で知り合った密かに想いを寄せるタカラヅカの女子学生が、空襲で顔に大きな火傷を負う。復讐心に駆られて戦闘機から脱出した米兵を襲おうとするのだが、結局は思いとどまってしまう。
 手塚治虫といえばヒューマニズムの漫画家、と世間には認知されているのだろうが、それは本人も認めているように「オブラート」。青年誌や子供向け漫画も含めて、実際は人間のドロドロとした内面や現実の悲惨さをしつこく描いてきた作家である。取り分け手塚自身が戦中派であり、戦争の現実を目で見て体に感じてきたと言う事を考えれば、これらの作品群に作家の本音がもっとも出ていると言っていいいのではないだろうか。

手塚治虫「戦争漫画」傑作選 (祥伝社新書)

手塚治虫「戦争漫画」傑作選 (祥伝社新書)

  • 作者: 手塚 治虫
  • 出版社/メーカー: 祥伝社
  • 発売日: 2007/07
  • メディア: 新書



タグ:手塚治虫
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