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読書の日々(新潮社 『考える人 2005年秋号』) [読書]

 特集記事は「ドイツ人の賢い暮らし」。南ドイツのバーデン=ヴュルテンベルク州での取材を元に、ドイツ人のエコロジーライフを紹介している。原発をやめるという方向性を、G8の中でいち早く選択したドイツのことが最近注目されているので、今から約6年前の内容だが読み返してみた。
 環境首都として名高いフライブルク市。ヴォーバン地区には環境と共生する「エコ団地」がある。地区内には再生可能な有機物を利用して電気を作るバイオマス発電機を設置し、同時に発生した熱を地域のセントラルヒーティングとして利用しているコージェネレーションシステムを取り入れた最新設備を導入している。また、ソーラーパネルを配備している住宅もあり、計算上では全ての電力を再生可能エネルギーでまかなえるとのこと。記事とともに掲載されている写真で現地の暮らしを見ることができるが、家を取り囲むように木は生い茂り、木漏れ日は微妙で影が優しく、空は抜けるように青い。長閑で美しい風景は、エコに興味がない俺でも何だか凄いな、と感心してしまう。
 記事もエコ最高!というようなドイツ人の話が多い中で、在独ジャーナリストの熊谷徹氏のコラム、『ドイツ社会に見る「環境ロマン主義」』がひときわ印象に残る。直情径行なドイツ人気質は、チェルノブイリの放射能汚染などの環境汚染を経て、ひときわ執念深く環境保護に向かうようになった、という分析である。原発の段階的廃止を法律にしたり、化石燃料や電力の消費に税金がかけられ、再生可能エネルギーの振興を賄う費用になっている。ドイツの人々は高い電気代を支払うことで維持ができるエコに高い価値を見いだしているので、エコを疎かにすると政局になり、会社の株も下がるというのがドイツの事情のようである。熊谷氏は最後に、このコストが高くつく環境ロマン主義がどこまでもつのだろうかという疑問を呈して、文章を結んでいた。
 そんなロマンティックさが際立つが、ドイツの政治は理想と現実の折り合いをつけているように見える。2010年に再生可能エネルギーが発電の17%を占めるようになったようだが、未だに半分くらいは火力発電、2割くらいは原子力発電に頼っている。浜岡原発が停止という流れの中で日本のエネルギー政策の進むべき道を考えると、ドイツが実行してきたある種の妥協とか冷静さの中に進むべき方向性のヒントがあるのかもしれないと思った。
タグ:考える人
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