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読書の日々 (辻井喬、上野千鶴子 『ポスト消費社会のゆくえ』) [読書]

 1月末に足首に負った怪我の所為で、2月に入ってから2日間しか出社をしていない。足首の痛みに苛まれる以外に不自由はないので、この少しの休みの間は昨年から買ったままで未読の本をじっくりと楽しむことができた。
 共著の辻井喬という名前にピンと来ない人が多いだろうが、彼の本名は堤清二だ。セゾングループの総帥で、西武百貨店、パルコ、ロフトや吉野家など、その企業名を口に出せば、巨大グループ企業の隆盛を思い出すことができるのではないだろうか。セゾンカードのクレディセゾンはグループ企業で、その傘下のセゾンレースホースは競馬ファンでなくても座るサラブレッドのCMで有名な、ドリームパスポート号が所属していたことを覚えている方もいるだろう。
 俺の記憶では、バブル経済崩壊後に経営が破綻したセゾングループに私財を100億も投じたリッチな実業家のイメージがとても強い。当時のマスコミは、経営の不手際での負債は堤清二氏に責任があるから当然だ、みたいな論調が多かったんじゃないだろうか。
 そんな堤清二とセゾングループについて、社会学者の上野千鶴子が突っ込みつつ、作家業での辻井喬が来し方を回顧するという不思議な対談本である。
 西武百貨店を中心としたセゾングループの隆盛は、ちょうどこの本の第2章にあたる70年代から80年代だった。当時の俺はティーンエイジャーで、休日には親と西部百貨店に買い物に行き、屋上のゲーム機で遊んだりした記憶がある。当時の百貨店は子供の遊び場であり、その親にとっては買い物を楽しむという、ライフスタイルの提供の場であった。
 結局、一億総中流と言われていた日本社会はバブル経済で足元が揺らぎ、この10年のグローバリゼーションで完全に崩壊した。所得の再分配が雇用の拡大につながり、個人も社会も成長していく路線は終わったのだろう。
 そんな西部百貨店もセブンアンドアイホールディングスの傘下であり、そごうの心斎橋本店も大丸に売却。栄枯盛衰そのものだ。このあとの百貨店業界も日本の社会もどこに行くのだろうか。
 316pの辻井喬の言葉は気休めかもしれないが、「…これからの時代はもっと良くなるよ、と言ってあげたいと思います。」を心の片隅に止めておきたいと思ったのである。
 

ポスト消費社会のゆくえ (文春新書)

ポスト消費社会のゆくえ (文春新書)

  • 作者: 辻井 喬
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2008/05
  • メディア: 新書



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